(代筆日記/神藏美子)
山本政志監督の映画『スリー☆ポイント』のトークショウに、内田裕也さんが出演なさるので、渋谷のユーロスペースにでかけた。『スリー☆ポイント』は、試写会で観たけれど、もう一度観ておきたい、おもしろさだったのだ。『俺は最低な奴さ』のプロデュース、インタヴュアーの近田春夫さんもいらしていた。内田裕也さんと、近田春夫さんは、特別に親しい仲だ。トークショウの前に、近田さんや、山本監督とともに、控え室にいたスエイに合流すると、ほどなくして、内田裕也さんが、マネージャーの方と現れた。颯爽としているけど、不思議に威圧感はなかった。わたしたちが、少し遠慮して、立ったままでいると、席につくようにすすめてくださった。それから、トークショウの前にしばらく、今回の原宿警察で過ごした二十日間のことや、出てきてからのことなど、お話になっていたけれど、きわめて上品。原宿署の収監人番号が、69番だったというのは、偶然にしては、出来すぎている。逮捕されると、世間は、いきなり極悪人のように、断罪しようとする。内田裕也さんも、そういう圧力を感じてらっしゃるようだったけれど、こういう時に、手紙とかを、くださる方のありがたさについて、話していた。
すぐ横の席にすわっている内田裕也さんの、シルバーの大きな指輪のはまった手は、指が長く、とても繊細だった。内田也哉子さんが、『会見記』中で、自分の手と、お父さんである、内田裕也さんの手が、同じ形だというようなことを、書いていたのを思い出しながら、すぐ目の前に置かれた、優雅な細い手を見ていた。労働に、縁のない家系の人の手だ。『俺は最低な奴さ』の中に、幼児の裕也さんが、お兄さんや、お姉さんたちと、ご自宅の立派な門柱の前で写した写真が、一枚載っている。大きな邸宅で、子供時代は暮らしていたそうだ。
『スリー☆ポイント』は、沖縄、京都、東京と、三つの場所で、撮られたオムニバス映画。沖縄編は、かぎりなくドキュメンタリーに近い。山本政志監督のことをスエイは、「現場力がある」と言っていたけれど、山本監督ならではの、現場力によって、登場人物たちに突然出会い、沖縄についてのディープな映像をその場で見せてくれる。ガルルルッと、泥に手を突っ込んで、カニを捕まえる「てっちゃん」の映像は、忘れられない。
京都編は、ラッパーや、ドラッグがらみの、アウトローの世界。東京編は、正常なのか、異常なのかわからない男女の、一種の恋愛物語のような劇映画。この三つの場所も、ストーリーも、まったくつながらない三編が、テーマもなく合わさって出来上がっている『スリー☆ポイント』は、まったく新しい発想の映画だ。近田春夫さんは、『スリー☆ポイント』を三回観たと、おっしゃっていた。アナーキーで、不思議な爽快感のある映画だ。

左から、山本政志監督、内田裕也さん、近田春夫さん

